オタワの天使のオタワ日記

カナダをこよなく愛する、オタワ在住の天使がお届けするオタワの日常レポート。

「ない」がある生活

2020年8月9日 オタワにて綴る -

 

皆さんこんにちは、オタワの天使です♪

今日、この日記を訪ねてくださったことに心から感謝します☆

 

本日のオタワは数日ぶりに雨降りの日。鳥たちも虫たちも今日は静かにどこかで雨宿りをしているでしょうか。窓の外には雨のしとしと降る音だけが静かに響いています。

 

8月に入ってから、木々の葉の緑色がこれ以上ないほどとても濃くなり、何となく、日の光の色具合などからも、もう夏の終わりが間近なことを肌で感じるようになりました。午後の強い日射しや、賑やかな蝉の鳴き声を聞きながらも、なんだか夏の花火大会の最後の10分間を見ているような感じで、胸には名残惜しい気持ちが押し寄せてきます。

 

天使の故郷の東北地方ではいよいよ夏の暑さが本格的に始まったとききました。皆さんのお住いの場所では、今週はどんな気候の変化が感じられましたか。

 

3年前にオタワに住み始めてから、私は毎年7月の半ばから8月にかけて、日本の故郷に帰省して夏の盛りの暑い時間を両親の家で過ごすことが一つの習慣になっていました。いつもちょうど今頃は、久しぶりの日本での濃ゆい時間を終えて、故郷の七夕祭りの飾りに見送られながらオタワに戻ってくる頃です。今年はコロナウイルスの影響で、初めて、ずっとこちらオタワで過ごす夏となりました。

 

普通だったら、私が帰国しないと言ったら、日本の両親は

「えー、なんでなんでなんで!」

と大騒ぎになりそうなところ、今年はパンデミックということで、わりとあっさりと、

「こういうことだから、仕方ないね」

と、何の騒ぎもなく、落ち着いた感じで一時帰国なしの夏が互いに了承されました。

 

周りの人も誰も遠くへ出かけていないので、私としても何も「逃した!」という感覚がなく、不思議と落ち着いた心持ちで、与えられたこの夏の時間を隅々まで味わいながら過ごしています。

 

それで一つ、思い当たったことがありました。

 

日本に「帰れない」ことで味わえている豊かな感情があるなあ、ということです。

 

いつも、夏が近づいてくると帰国の日程を決めたり、飛行機を予約したり、帰国している間に誰にいつ会うかを考えたり、とやることが沢山あって、私はよくプレッシャーを感じて気が滅入ることがありました。帰国して馴染みの場所を訪れたり、馴染みの皆に会うのは楽しみなはずなのに、肝心のそのことに思いを馳せることができず、毎日、忙しくやることのリストをこなしていく。そして、出発の日まで、荷造りで四苦八苦して、

「うわーん!!もう嫌だ!もう帰らなくていい!」

と最後は心の中で泣き叫びながら、走って家を出発。飛行場でチェックインして、出発ロビーのソファに座ってようやく我に返り、

「ああ、これから日本に行くんだ。え、本当に日本に行くんだ?」

と驚きながら、飛び立つのがパターンでした。飛行機の中では、これから久しぶりに過ごす日本での時間に思いを馳せて楽しみな気分に浸りたいのに、徹夜の荷造りがたたって、その気分に浸る間もなく就寝。気が付けば、日本到着。東京の暑い熱風を味わい尽くす間もなく、そのまま新幹線に乗って故郷へ。

 

今年は、そのどれもありませんでした。旅の日程を決める必要もなく、飛行機のことを考える必要もなく、誰にいつ会うかを決める必要もありませんでした。

 

代わりに、私はいつもこの時期に家族と過ごす日本の夏の時間にゆっくりと思いを馳せました。大好きな日本の食事の一つ一つ、両親の家の湿気に満ちた夏の匂い。新幹線に乗って故郷へ向かう時の気分。出張帰りの人が食べる駅弁の香り。家族でよく行く温泉のこと。お風呂上がりのシーシーレモンの味。車に乗って親戚の家のある関東地方へ出かける時のこと。おいしい手作り弁当。あたり一面に広がる、田んぼの風景。視界に広がる物静かな山々の存在感、そして、近くに感じる太平洋の海の存在感。鳴きやまない蝉の声。おいしい夏の果物 - 桃、梨、ぶどう、すいか、メロン。おいしい夏のおつまみ - 枝豆。おいしい夏の和菓子 - 草餅とおはぎ。 そして、私の大好きなモナカアイスクリーム、「モナ王」。各地の夏祭りの賑わい。花火の音。

 

ひとつひとつ、じっくりと思い出していると、まるでそれを本当に今体験しているかのような気持ちになり、とても暖かな感情が胸の奥から押し寄せてきます。実際に日本に行っていた時には感じきることのできなかった感情が、こうして今、味わえていることの喜び。

 

私たちの生活の中で、何かが「ない」時、それは、今目の前に「ない」そのものと、本当に深いレベルで触れ合うことのできる有難い時間なのかもしれません。「ない」がやってきたとき ー それは物かもしれないし、人かもしれないし、出来事かもしれない - それは、胸の中の静かな場所でその対象と本当の意味でつながることのできる滅多にないチャンスなのかもしれません。

 

今皆さんの手元にある、「ない」は何ですか?

 

 

おしまいに、今週のフォトレターです。

 

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Rakhi のプレゼント

八月三日はインドのRaksha Bandhanというお祭りの日でした。この日は伝統的に、女の子が男兄弟の手首にRakhiという飾りを結ぶ日なんだそうです。でも、最近では姉妹同士や近しい友だち同士でもRakhiを結ぶようです。ハウスメイトがインドから取り寄せたRakhiを結んでくれました。

 

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手作りRakhi

こちらは、別のハウスメイトが作ったRakhi。お気づきになりますか?そう、モチーフは日本の折り鶴です。今、私を含めた家の何人かで千羽鶴を作るプロジェクトに取り組んでいるのですが、そこからインスピレーションを得て、こんな素敵なRakhiが生まれました。

 

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パティオにて朝ごはん。チャイとともに♡

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美しいリドー川辺、八月。

 

 

最後までお読みくださり、本当にありがとうございました☆

 

 

今日も、皆様にとって素敵な一日となりますように。

 

 

 

愛を込めて、

オタワの天使